Melts in your mouth
メニュー画面に自動的に戻っているゲームを一瞥して、再び視線を天井へと滑らせた私の口からは相変わらずの深い溜め息。本日何度目か分からないが、世で言う「溜め息吐いたら幸せが逃げる説」が本当であれば、私にはこの先不幸しか待ち受けていないと思う程には溜め息をついた。
もう一生分溜め息を吐き出している気がする。sucré編集部に所属して数々の課題に直面した時よりも溜め息が零れてしまう。
原因なんて一つしかない。それもこれもあれも全部平野のせいである。平野なんかに恋してしまったからである。天と地が引っ繰り返ってもあり得なかったはずの現実が己の身に降りかかっている。
「何で風俗してんのよ…。」
目元を腕で覆い隠しながら、つい口を突いてしまった言葉。それこそが、私がここ最近ずっと頭を悩ませ、心ここにあらず状態で溜め息製造機になっている理由だった。
平野への恋心を自覚し、日を追うごとにそれが大きく膨らんでいく最中で、どうしても脳裏に浮かぶのは結芽に頼まれて替わりに女性用風俗を利用することになったあの夜だ。
やけに目が痛くなる装飾に包まれたラブホの一室で、色気が駄々洩れの平野に組み敷かれた際の記憶がどうしても胸に引っ掛かって仕事以外何も手についてくれない。