Melts in your mouth
あの男が副業で何をしようと関係なかったはずなのに、風俗をやっていた平野を思い出しては、形容し難い大きなモヤモヤとした感情に吞み込まれてしまいそうな感覚になる。
どうして風俗スタッフをやっているのだろうか。副業の選択肢なんて山ほどあるってのに、どうしてよりにもよって風俗なのだろうか。
別に風俗が悪いと言っている訳ではないし、軽蔑している訳でも勿論ない。じゃあ何が嫌なのか。それは、他の女を裸にして仮初めと言えど恋人の様に時間を過ごして男女の仲になる事だ。
甘く口許を緩めて、熱い体温で身体を撫で、糖度の高い台詞を指名した女全員に吐いているのかと考えると、悶々として仕方がない。同時に、表情がぐしゃりと崩れる程の強烈な嫉妬心まで覚えてしまう。
こんなの、私らしくないだろう。
こんなの、私の柄じゃないだろう。
気を紛らわせたくてゲームを手に取ってみても結局無理で、どれだけ思考を巡らせたとてこの悩みが晴れる事などないというのに、ずっとずっと囚われてしまっている。
「あー苦しい、しんどい。」
自分で思っているよりもずっとずっと、私は平野が好きらしい。
その事実が、何よりも自らの胸を締め付ける。