Melts in your mouth
嫉妬心に満ち満ちた台詞を吐いた相手に、胸がギュッと締め付けられて痛い。それと同時に、完全無欠な様に思われる山田もやはりちゃんとした人間なのだと感じる。
束の間の沈黙がテーブルを包んだ後、フッと向かい側の男が自嘲的な笑みを零した事でそれは破られた。
「悪い、菅田は何も悪くないのに嫌な空気にしてしまったな。」
罰の悪そうな表情を見せる相手に私は首を横に振って応える。ぶっちゃけ山田は全然悪くない。私が山田の立場でも面白くおないと感じるし、きっと同じ位嫉妬しているだろう。
それなのに、すぐに自分が悪かったと認めて謝罪できる山田のそういう所を、私は心底尊敬している。人間のできた山田と出会えた事は私の人生においてかなり大きな収穫だ。
「大丈夫、気にしないで。こんなこと言うのは変なのかもしれないけど、私を好きになってくれてありがとう。」
自然と口を突いて出た台詞に若干羞恥心を覚えてグビグビと気泡の揺れるビールを煽る。方や山田は僅かに目を見開かせた後に優しくそれを細めて微笑んだ。
「菅田のそういう所が、やっぱ好きだわ。」
「は、はぁ?」
どういう所だよ。酒乱な所か?だとしたらよっぽど見る目がないぞ山田。