Melts in your mouth

こう見えても一応女な訳で、山田という美形で素晴らしい人間に面と向かって「好き」なんて言われれば、ちゃんと照れてしまう。

頬が熱い…酒のせいであって欲しいが、この程度では酔ってくれない自分の身体を誰よりも熟知しているから、これは間違いなく山田が原因だ。



「ありがとうな、菅田。菅田を好きになれて幸せだ。」

「疲れてる?それとももう泥酔してるとか?」

「安心しろ、理性しか働いてないし菅田に会えたから疲れは吹っ飛んだ。」

「微塵も安心できない。心臓に悪い。」



人生において圧倒的ロマンス不足で生きてきた私はどういう表情をするのが正解なのか分からず、嘘が親に露呈した幼子の如く目を泳がせる事しかできない。

ジョッキを握ったまま動揺している私に対して、フフッと相手は柔らかく口許を緩めている。


なんていうか、最初に山田に気持ちを打ち明けられた時はもっとこう関係性がぐしゃぐしゃに崩れてしまうんじゃないかって危惧していたけれど、それは杞憂だったらしい。

私達の関係性はこれまでとは確かに変わったものの、変わらず会話したり笑い合える仲でいられるのは山田が優しいおかげなのだろう。



< 147 / 170 >

この作品をシェア

pagetop