Melts in your mouth


前に髙橋編集長が「平野君って本当に掴みどころがなくてミステリアスよねぇ」と不意に漏らした事があった。それに賛同したのは私を除くsucré編集部の人間で、そこから平野の話題で大盛り上がり。


丁度その時、締め切りギリギリの先生の原稿の手伝いをしてくると平野は席を外していて、私は外野でさっさと平野の話題終わらないかなーって心の中で呟いてたら「永琉ちゃんから見た平野君ってどういう子なの?」と突然急カーブを切った剛速球が私に向かって投げられた。



忍びの如く存在感を消して息を殺していたのにまさか自分に話を振られるとは想像もしていなくて、平野以外の前ではとてもお利口さんな後輩を繕っている私は素直に「いけ好かない奴ですね」とも言えず、大困惑。


そのせいで微妙な間を作ってしまい、かと言って話に合わせて平野を褒めちぎるなんて行為は例え嘘でもしたくなくて頭を抱えていると、実にナイスタイミングで担当漫画家から電話が掛かってきてくれたおかげで、あの時は事なきを得た。



どうして私がこの出来事を思い起こしたかというと…。



「平野って不思議な所があるよなー。」



隣にいる山田が突然そんな発言をしたからだ。


飄々とはしてるけど不思議な一面なんてなくないか?山田の言葉に首を捻った。髙橋編集長やsucré編集部メンバーも平野を「ミステリアス」だと形容していたけれど、それも私にはよく理解できない。



「何で?」



だから純粋にどうして平野に関わった人間が口を揃えてあいつを不思議に思うのかが気になって、折角の昼休みなのに平野の話を続行させる様な質問を山田に投げてしまった。


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