Melts in your mouth
二日後の日曜日。午後七時。私は人生で最大の後悔と屈辱を味わう事になる。
「こんばんは、初めましてーじゃないですけど自己紹介しますね?ノラと言いまーす。」
中世ヨーロッパのロココ様式をコンセプトにしているらしいラブホテルの一室。ベッドに寝そべってゲームをやり込んでいた私の手を止めたのは、聞き覚えしかない間延びした口調とやけに腹立たしく感じる声。
「今夜はご指名ありがとうございます。結芽ちゃんからはお話聞いてるので大丈夫ですよ?今夜は俺がいっぱいご奉仕しますね?」
「……。」
「えーる先輩♬…あ、間違えた。永琉さんっ♬」
ノックされた扉の向こう側から現れて私の視界を独占したその人物は、よーーーーく眼を凝らしても、何回瞬きをしても、どんだけ頑張って現実逃避しようとしても、私がこの世で最も嫌いなホモサピエンス、平野 翔にそっくりだった。
というか、平野 翔本人だった。
思考が停止して五秒後。じわりじわりと現実を把握していく脳味噌に今すぐ隕石でもぶつかって私の肉体諸共散り散りになって消え失せたりしないかななんて、有り得ない祈りを捧げてしまう程に、私の顔面及び全身からサーッと血の気が失せた。
どなたか今すぐ私を殺して下さい。もう死にたいです。それか深い穴を掘って下さいませんか。喜んで飛び込みます。