おこぼれ聖女と魔眼の騎士
井戸の治癒師
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大神殿は王都のほぼ真ん中に位置する。
ここから街の北にある小高い丘の上に、緑の木々に囲まれた壮大な王宮がある。
私が勤める治療院は大神殿の隣にあるけど、古びた二階建ての木造のせいかあまり目立たない。
始めて来る人は『ここが治療院です』と案内されないとわからないだろう。
一階が治療室で、二階には症状の重い人が何日か泊まり込んで治療を受けられるベッドがある。
「おはようございま~す」
大きな声で挨拶しながら中に入ると、すぐに二コラ神官から声をかけられた。
「ああ、待っていたよエバ」
「おはようございます二コラ様」
二コラ様は頭髪は寂しいのだが、まっ白なお髭は豊かな古参の神官だ。
治療を求めてやってきた人たちの症状を聞いて順番を決めたり、往診の依頼を受けるのが二コラ様のお仕事だ。
私が薬草店に引き取られるよりずっと前から、セバスじいちゃんとは仲よしだったそうだ。
おこぼれで聖女の力を授かったことは二コラ様もご存知だけど、周りには内緒にしてくださっている。