おこぼれ聖女と魔眼の騎士

この大噴水の計画が完成するまで、まさに山あり谷ありだ。

マント山にわき出ている源流から少しずつ傾斜をつけながら水を流すのも大変な工事だろうし、水を噴き上げる設備を整えることだって半端ない作業だ。

何人もの貴族の領地を通して水路を造るのだから、工事に携わる人たちは気を遣っただろう。
高く水が吹き上がるように、綿密な計算をしたはずだ。

アドラさんの店がこの仕事に携わっていたため、毎晩のように職人さんたちが話し合っていたっけ。
そんなことを思いだしていたら、ぼやきともとれる呟きが二コラ様から聞こえた。

「こんな時期にどうして王都のあちこちで井戸の水が枯れたり汚れたりするのか……」

二コラ様はそれ以上は口にしないが、このところの井戸の問題は大噴水の工事が関係しているのではとチラホラ耳にするようになっていた。

王家への不敬と思われそうだから、なかなか口にすることはできない。
二コラ様は誰にも相談できず、とても悩んでいらっしゃるようだ。






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