おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「じゃあ、エンド地区の様子を見てきますね」
「頼んだよ、エバ。井戸の治癒師の出番だ」
「二コラ様まで……その呼び方だけはやめてくださいよ」
治癒師と井戸に共通点はないのだが、私はよく井戸のトラブルに呼びだされる。
というのも、私にはどうやら穢れや瘴気を感じる力があるらしい。
それが水に関係している場合、特に強く察知できる。
どうして井戸が汚れたり枯れたりしたかの原因もすぐわかるし、枯れた井戸がどうすれば蘇るかとか新しい井戸はどこに掘ればいいかとか、なんとなくわかるのだ。
水の気配というか、水の方からが話しかけてくれる……という感覚に近いかもしれない。
私が手をかざしながら井戸を見つめたりのぞいたりしていると、子どもたちから『井戸の治癒師』とからかわれる。
新しい井戸の場所をキョロキョロ探していると『井戸掘り名人!』なんて声がかかったときは恥ずかしすぎる。
それでも役にたつ力だと思って、困っている地区に出かけているのだ。
周りの人には『なんとなくそんな気がしたから』と誤魔化しているが、これもおこぼれ聖女の力だろうとセバスじいちゃんからは言われている。
(井戸はどうしたんだろう。枯れたのか、汚れたのか……)
井戸が枯れる理由は、ほとんどの場合は水を使い過ぎて枯れてしまうのだが、最近では信じられないことも起こる。
たとえば瘴気がわずかに井戸に溜まっていたりするのだ。
私も口には出さないが、二コラ様が心配していることは理解できる。
大噴水の工事がなんらかの形で、王都で起こっている井戸の問題に影響しているようにも感じる。
「誰か護衛を連れて行くかい?」
「いえいえ、近いから大丈夫です。いってきます!」