おこぼれ聖女と魔眼の騎士
(護衛だなんて、二コラ様は大袈裟なんだから)
たしかに井戸の水は生活に欠かせないものだから、枯れたりするといざこざが起こりやすい。
少し前にG地区に呼び出された時には、ご近所さん同士で殴り合いのケンカになりそうな雰囲気だった。
王都を守る第三騎士団から何人かが駆けつけてくれたからケガ人は出なかったものの、毎回どうしてもトラブルが起こるのだ。
とはいえ、単なる治癒師の私に護衛は大げさすぎる。騎士様たちだって忙しいんだから申し訳ない。
***
この国の騎士団はいくつかの役目ごとに分かれている。
王家を守るのが第一、国を守るのが第二、そして民を守るのが第三騎士団だ。
第一は貴族出身者ばかりだし、第二は貴族と平民が半々、第三になると平民出身の職業騎士の集まりだ。
第三騎士団は気安くていいけど、荒っぽい人が多いといわれている。
それとは別に、神殿にも騎士がいる。
二コラ様が言ったのは、治療院の隣にある大神殿に常駐している神殿直属の騎士のことだ。
いわゆる聖騎士と呼ばれる人たちだ。
ここには騎士としての実力はもちろん、家柄や見栄えのいい方が選ばれるという。
つまり騎士の中でもエリート集団というわけだ。
聖女様たちが神殿におみえになる時や、王族の視察に聖女様が同行する時のための存在だから、私みたいな下っ端治癒師の相手なんてするわけがない。
誇り高い彼らに頼むだけ無駄というものだ。
ただ魔獣討伐のときは特別で、全部の騎士団から優秀な人だけが集められるという。
ここ数年は魔獣が現れたという話は聞いていないから、私も噂でしか特別騎士団のことは知らないけど。
そんなことを考えていたらあっという間にエンド地区に着いた。
(確か井戸は……あそこかな?)