おこぼれ聖女と魔眼の騎士
人が大勢集まっているから、おそらくあのあたりだろう。
町家や商店が並んでいて、路地が交差する四つ角の真ん中あたりに人混みが見えた。
近くには小さな広場もあって、地区の人たちの憩いの場になっているみたい。
この辺りの住民たちに混ざって、濃い赤の制服を着た第三騎士団の騎士たちの姿もある。
住民同士が騒ぎを起こすのを防ごうとしているようだ。
「あの~、おはようございます」
一番身なりがよくて恰幅のいい年配のおじさんが目についた。
この地区の区長さんだろうと思って、声をかけてみる。
「あんたは?」
おじさんの眉間には縦皺がよっている。かなり困った様子だ。
「治療院から来ました」
「おお、あんたが井戸の治癒師さんかい?」
おじさんの顔がパッと明るくなった。
「は、はい」
ここでもあだ名で呼ばれてしまったが、その方がわかってもらえるみたいだ。
「うわさは聞いてたが、こんな小さな女の子だったとは」
「小さな……」
この国では十五になれば一人前として扱ってもらえるんだけど、小柄な私は年より幼く見えるらしく、十六になってもまだ子ども扱いされることが多いのだ。