おこぼれ聖女と魔眼の騎士


(いつか母とふたりであの屋敷を出ていこう)

幼い頃から誓っていたが、シュナーデル家から抜け出すのは難しかった。
俺しか力を受け継ぐ息子が生まれなかったのだ。
幸い俺は母のような扱いはされなかったけど、逃げ出さないように厳しく監視されていた。
公爵家を継ぐために学問も剣術も厳しく指導され、朝から晩まで自由はなかった。

俺はこの世に産まれた瞬間から、シュナーデル家を継いで子孫を残さなくてはならない運命を背負ったのだ。
王家が必要とする力だから、俺はどうあがいてもここから逃れられない。
シュナーデル家に生まれた以上、代々受け継いできた力こそが俺を縛り付けるのだ。

俺の心に、希望という二文字はなかった。

母をあんな目にあわせている父が大嫌いだったし、こんな力を持って産まれたせいで思い通りの人生を歩めないことにも腹が立つ。
父の正妻や側室、義理の兄姉たちからは疎まれ、嫌われた。

屋敷の中で、俺はいつもひとりだった。
母のことを思うと、やるせない気持ちで胸がいっぱいになる。
心の中はどんよりと暗く、生きていることすら恨むようになっていた。








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