おこぼれ聖女と魔眼の騎士
私のようにトール修道院で育てられた子は、十二歳になるとひとり立ちするのが決まりだった。
自分の力で働いて生きていくために、それぞれにあった仕事を選んでくださるのも院長様だ。
『花を育てるのが大好きなエバにはピッタリだと思って』
院長様は私に、王都にある『アドラ園芸店』を紹介してくださった。
そこは王都でも有名な、貴族から商人の屋敷にまで幅広く出入りしている大店だ。
アドラさんという大柄で腕のいい庭師さんが大勢の職人を抱えていて、庭園の設営から植栽、庭の管理までを請け負っている。
『男の子ほど力はありませんが、エバはきっとお役に立ちますよ』
庭師には体力が必要だけど、院長様は私が草花を育てるのが得意だからと売り込んでくださった。
実は、私が枯れかけた花に水やりをすると元気を取り戻すのだ。
院長様は幼い私が水やりをしているのを見て、驚いた顔でおっしゃった。
『エバにはなにか不思議な力があるのかしら』
院長様の声は震えていた。そしてなにかに怯えているように考え込んでしまわれた。
『エバ、その力は私とふたりだけの秘密にしましょう』
院長様との約束は、私の心に刻まれている。