おこぼれ聖女と魔眼の騎士

俺はまだ、瘴気や人の隠れた悪意を直接見たことはない。
父がいうには、危機に陥った時に自然とわかるものらしい。

父には隠しているが、俺にはもうひとつ力があった。
悪しきものとは真逆の、清らかで厳かな光を感じ取れるのだ。

この力に目覚めたことを、父には伝えていない。
あえて父に言わなかったのは、いつか父から離れる時の切り札になると思ったからだ。

それは突然、見えた。キラキラと光る心地よい柔らかな光。
ほかの人には見えていなくても、俺にははっきりとわかった。
王宮の庭で出会ったひとりの少女のおかげで、俺にはシュナーデル家の力だけでなく別の力にも目覚めたようだ。

第三王子の側近や婚約者を決めるために、王宮に高位貴族の子弟が集められた日。
俺もシュナーデル家の跡取りとして参加させられた。

だが子どもたちは奇異なものに敏感だ。
俺の赤い目と髪は醜く映ったのだろう。

『なにあれ、気持ち悪い』
『悪魔みたい』

あからさまに気味悪がられるし、ひそひそと交わされる悪意に満ちた言葉。

(貴族なんて大嫌いだ)

眼や髪の色が違うだけで、自分たちの仲間から排除しようとする。
自分とは関わりないと、わざと無視したり蔑んだりする。

(こんなところにいたくない)

十六歳になったとはいえ、俺は貴族社会にうんざりしていた。
誰にも会いたくなくて、王宮の広い庭に紛れ込んだ。
適当に時間を潰して、お茶会をサボッたと父にバレないようにすればいいと考えたからだ。




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