おこぼれ聖女と魔眼の騎士
庭園をふらついていた時に、俺はひとりの少女を見かけた。
庭師たちが忙しく働いている中で、ひとりだけヒラヒラと舞うようにあちこち飛び回っている。
落ちた葉っぱを拾ったり、木にリボンを結んだりしているから働いているのだろう。
(王宮の下女か?)
侍女よりもっと質素な服装だし、地味な顔立ちだ。
普段なら気にも止めないところだが、彼女の指先からキラキラとした光の粒がこぼれているのが気になった。
(あれはなんだ?)
とても暖かい光だった。
彼女は小さな粒をまき散らしながら、ニコニコと庭中を動き回っていた。
(……なんてきれいなんだ)
少女が美人というわけではない。ただ、輝いている。
貴族仲間から容赦なく傷つけられて沈んでいた俺の心は、彼女を見ているだけで癒されていく。
心がほかほかと満たされていくのを感じながら、植え込みの陰から彼女だけを見続けていた。
お茶会のことなど忘れるくらい、見とれていたといってもいいだろう。
だが庭師たちの仕事が終わった頃、ひとりの職人が大ケガをしてしまった。
(医者を呼ぶべきか? でも王宮医官が平民を診てくれるとは思えない!)
俺がひとりでどうしようかと焦っていたら、彼女が慌てて職人に駆け寄った。
同時に、それまでとは比べられないくらいの光が彼女から放たれたのだ。