おこぼれ聖女と魔眼の騎士



俺が生まれ持っていた力を実感したり、彼女の輝きに感動したりしているうちに、大柄な髭の騎士がなにか文句を言いだしている。

アイツはたしか、第三騎士団の嫌われ者だったはず。
騎士からも住民たちからも、居丈高な物言いと態度に不満が寄せられていた。
名前は知らないが、顔はしっかり覚えた。帰ったら団長に報告して、どこか田舎に飛ばしてしまおう。

「ここを掘っても水が出るはずないと思われるんですね。地区の皆さん困っているんですよ。あなたが連絡したら専門家がすぐ動いてくれるんですか?」
「なんだ? 偉そうに」

カチンときたのか、小さい身体なのにうんと背伸びして髭の騎士に向かって啖呵を切っている。

たしかに第三騎士団が連絡したからといって、新しい井戸が出来るのなんていつになるかわからない。
このままではマズいと思って、慌てて彼女に声をかけた。

「いや、あなたの評判は聞いている。私は水が出ると信じているよ。すぐに手配しよう」

ハッとした顔の彼女に、続けて話しかける。

「このところ、王都で相次いでいる不可解な井戸の問題を解決してくれている治癒師さんだろう?」

「は、はい」

「ありがとう。大勢の人が君に救われているよ」

彼女は俺の顔を見て、嫌がるそぶりを見せなかった。
そのうえ、信じられない言葉をポロリとこぼした。

「綺麗な瞳……」
「え? 綺麗?」

この瞳のこと? と思わず聞き返そうかと思ったら、彼女は俯いてしまった。
残念だったけど、ほんのり頬を染めた彼女は、とてつもなく可愛かった。
ちょっぴり困っているのか、なかなか目を合わせてくれない。

「私は第三騎士団の副団長、アランだ。また王都の井戸でなにかあったら君に声をかけるよ」

彼女がうっすらと頬を染めているのがわかって、なんとなく嬉しくなってきた。







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