おこぼれ聖女と魔眼の騎士


「君の名前は?」

「エバです。エバ・フォレスト」

「もしかして、フォレスト薬草店の?」

その店の名前を聞いて、思い当たることがあった。

「は、はい」

「セバスじいさんの薬には騎士団もお世話になっているんだ。じいさんにもよろしく伝えてくれ」

挨拶もそこそこに、彼女は走り去ってしまった。
もう少しおしゃべりしたかったのが本音だが、彼女から得た情報は大きい。

(フォレスト薬草店の子か……)

その店の薬には定評がある。
よく効くと騎士たちも重宝している人気の薬草店だ。

だが、俺はもう少し違う力に気が付いていた。
その店の薬から、時おり小さな小さな消えそうなくらいの光を感じるのだ。

(さっき彼女が井戸に向かって手を伸ばしていた時の光と似ている)

気がつくかどうかくらいの絶妙な力加減。

(フォレストじいさんに聞いてみるか)

もと王宮薬師だという、あの偏屈なじいさんが彼女の力について素直にしゃべるとは思えない。
だけど、会ってみる価値はありそうだ。

(あの光は治癒? それとも浄化? いや、両方か?)

それがどれほど希少なものなのか、彼女はわかっているんだろうか。

力への純粋な興味とエバへの関心だけが俺の心の中に渦巻いていた。
井戸のことなど、頭から消え去ってしまうくらいに。




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