おこぼれ聖女と魔眼の騎士
治癒師見習いの恋
***
「やあ、今日はもう終わったの?」
「あ……」
この爽やかな声はアランさんだ。
治療院の門を出ようとしたら、第三騎士団副団長のアランさんがいるではないか。
「今日もお疲れさま!」
明るい爽やかな笑顔を向けられたら、一日の疲れが吹き飛んでいく。
このところ治療院に向かう時とか、仕事が終わった時とか、やたら彼が現れるのだ。
「街のパトロールがあるから、ついでに家まで送るよ」
「いえ、まだ明るいし大丈夫です!」
毎回お断りしても、アランさんはニコニコと笑ったまま私についてくる。
今日も並んで歩き始めたけど、緊張し過ぎて右手右足が同時に出そうになった。
「あ、危ない!」
さすが騎士だけあって反射神経がすばらしい、なんて思うどころではない。
転ぶどころか、アランさんのたくましい腕にがっちりと捉えられてしまった。
「あ、ありがとうご、ございま……した」
あまりの恥ずかしさで声が震えてしまったけど、気付いてないよね。
「大事な井戸の治癒師さんにケガさせられないからね」
アランさんは、私が井戸の治癒師だと認めてくれている。
それは困っている住民のためになるからで、私自分自身のことではないと言い聞かせる。
だって、そう思わないと心臓が持たない。
アランさんに会うたび、早鐘のように胸がドキドキ音をたててるなんて異常事態だ。
「さ、送るよ」
さりげなく隣を歩いてくれるのが恥ずかしいやら嬉しいやら、今日も私の心臓はどうにかなりそうだ。