おこぼれ聖女と魔眼の騎士
私がよいしょと薬草店の重いドアを開けようとしたら、アランさんが手伝ってくれた。
大きく開いたからか、いつも以上にカランカランとドアベルの音が響く。
「じいちゃん、ただいま~」
「おう」
中庭からセバスじいちゃんの声がする。
一緒に帰ってきたアランさんに目配せすると、嬉しそうに頷いた。
やっとじいちゃんに会えるからか、印象的な赤い瞳がキラリと光ってる。
「じいちゃん、お客さんだよ~」
思いっきり大きな声で呼びかけたら、じいちゃんが薬草を摘んだ籠を手にして店に出てきた。
でもアランさんを見るなり、不機嫌そうに顔を歪める。
「約束はなかったはずだがな」
「セバスチャン薬師ですね。お目にかかるのは初めてだと思います」
「お前さんは、シュナーデルの若い方か」
「はい」
じいちゃんは籠を作業台に置くと黙り込んでしまった。
(セバスチャン? じいちゃんの正式な名前?)
貴族的な響きのある名前に、私は内心驚いていた。
「あ、あのね、治療院の帰りに送ってくれたんだ」
私はじいちゃんの名前を聞かなかったことにして、アランさんがわざわざ送ってくれたことを強調した。
「ふうん」
薬草を分類し始めたじいちゃんは、気のない返事をする。