おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「一度お目にかかって、ご相談したかったんです」
「なにをだい?」
「王都での、井戸水が枯れる理由について」
「……」
じいちゃんはアランさんの方に目もくれない。
「じいちゃんの考えをアランさんに教えてあげて。お願い」
思わずアランさんに助け舟を出す形になってしまった。
このところの王都での井戸騒ぎには、じいちゃんだって思うところはあるはずだ。
「井戸水ねえ……」
じいちゃんがやっと作業の手を休めた。
「おまえさん、この店の中でシュナーデルの力を使うんじゃないぞ」
いつになくじいちゃんの声に迫力があった。
「わかっています」
アランさんは素直に頷いているけど、力ってなんのことだろう。
騎士団の副団長だから権力は使うなってことかなあと思ったけど、どうやら違うみたい。
「今日はお話ししたかっただけです」
「ふん。なら、聞いてやろう。ただし目を閉じておけ」
じいちゃんはアランさんが目を閉じているのを確認してから、彼の方を向いた。
まるで彼の赤い瞳をわざと避けているみたいだ。
「はい」
目を閉じろだなんていうじいちゃんの失礼な態度が気にならないのか、アランさんは話を続けた。