おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「また来ます」
「こなくていいぞ」
じいちゃんとアランさんは軽口を交わせるくらいには打ち解けたみたいだ。
私はアランさんを見送ろうと、薬草店のドアを押し開けた。
「重そうだな」
「そうなんです。古いし重いし、お客様に申し訳ないくらい」
またアランさんが押すのを手伝ってくれたから、ふたり寄り添う形になってしまう。
気恥ずかしさで頬が熱くなる。
一歩外に踏み出すと、店の前に人影があった。
お客様かと思って声をかけようとしたら、アランさんがその人の腕をつかんだ。
「どうしてここに……まさかひとりで?」
アランさんが話しかけた人は、ぶかぶかの生成りのシャツと黒っぽいズボン姿なのに、とても美しい顔立ちの少年だった。
「お前こそ、なにしてたの?」
そう言いながら、少年は私に気がついたみたいだ。
「あれ? 君は……どっかで会ったことある?」
こんなクルリとカールした金髪の美少年に会っていたら絶対忘れないと思う。
「いえ、初めてだと思うけど?」
普通に返事してしまったけど、身なりもいいし貴族のお子さまかもしれない。
なんとなくだけど、話し方が命令することに慣れている感じだ。
じいっと無遠慮に私の顔を見ていた少年が、いきなり表情を変えた。
「あっ⁉」