おこぼれ聖女と魔眼の騎士
真実の愛⁉


俺は王子の腕をつかんで、ずんずん歩いた。
フォレスト薬草店から、彼女から、一歩でも遠ざけなければと必死だった。

「あの店の店員なの?」

何を聞かれても、返事はしない。

「よく見たら可愛いじゃないか」

いつもなにかやらかしてくれるジョフレ王子だが、どうやらわずかな護衛だけでお忍びでやってきたらしい。
まさか薬草店で会うとは思ってもいなかったから焦ってしまった。

「危ないではないですか、こんな下町に来るなんて」

「だって、お前が女の子とよく街を歩いてるって聞いたんだもん」 

ジョフレ王子はぷうっと頬を膨らませた。
今年十四歳になるというのに、ジョフレ王子には子どもじみたところがある。

第一王子は王太子として学ぶことは多いし、公務もある。
第二王子はそのスペアとあって同じくらいの知識を求められる。
第三王子には特に課せられた役割もないから、王妃様が手元において可愛がった結果がこれだ。

「ズルいよ。あの時の女の子だろう?」
「あの時とは?」

俺はしらばっくれることにした。

「あの日、アーロンも見たじゃないか」
「はあ?」

お気楽なジョセフ王子は、あれこれと話しかけてくる。

「あの子、見つけたんだね」

「でも、あの時は王宮の庭にいたよねえ」

「居場所がわかったから、いつでも会えるし」

俺は黙り込んだままだ。王子の気まぐれな行動をストップさせなくてはいけない。

「王子!」

俺はガシッと王子の腕を握ると、足を止めた。

「それ以上はおっしゃってはなりません」
「どうして?」

「あれは、あの時のことは、私たちだけの秘密です」
「うん。でもさあ」

王子は納得していない。

「それに、彼女には大切な仕事があるんです」
「へえ~」

「今、彼女の周りをウロチョロされては困ります」

井戸の問題が片付くまで彼女に関わって欲しくない。この焦りが王子に伝わっただろうか。

「つまり、あの子に手を出すなってこと?」

やはりピントはズレていた。

「それほど、お前にとって大事な子なの?」
「は?」



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