おこぼれ聖女と魔眼の騎士



「母上には内緒だ。こっそりと父上と会ってもらいたいんだ」
「王妃様に知られずに会わせるなんて、至難の業です」

だが、国王をこのまま放っておいたら、ますます王宮中に瘴気が溜まってしまうかもしれない。

「だからアーロンに頼んでいるんだ」
「それに何年も経っていますから、その方もどこかに嫁いでおられるでしょうし」

「お前の父なら詳しいんじゃないか?」
「父ですか?」

正妻以外に側室や俺の母のような愛人を持ったくらいだから、女性問題に詳しいとでも思われたのだろうか。
俺としては一番口をききたくない相手だ。

「それなりに詳しそうな者に聞いておきますが、期待なさらないでください」

それで王子との話を打ち切った。
今の国王陛下に必要なのは元婚約者ではなく、エバ・フォレストのような瘴気を祓える力だろう。
そう思いながら、俺は王子に伝えるのを迷ってしまった。

(エバの存在は、王家に知られるわけにいかない)

王都の民を悩ませている井戸の問題解決に、エバは欠かせない。
国王陛下のためとはいえ、あの力は王家に都合よく利用されてしまうだろう。
最悪、瘴気を祓った後は消されるかもしれない。

彼女の屈託なく笑う顔、井戸の周りでチョコチョコと動き回っている仕草、並んで歩いている時のほんのりピンクに染まった頬。
そのすべてが愛らしい。

このままでは不幸な未来しか見えなくて、俺の中で彼女を守らなくてはという気持ちだけが強くなっていた。







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