おこぼれ聖女と魔眼の騎士


鬼ごっこでもしているのか、男の子たちが駆け出した。
ひとりだけ小さな子が混ざっていたが、すぐにバタッと転んでしまう。

エバが慌てて駆け寄った。
男の子はケガをしたのか、ワンワンと泣き出した。

(エバが力を使うか?)

あのキラキラとした治癒の光が見られるかと思ったが、エバは男の子を水場に連れて行き、井戸から汲み上げた水でケガをしたひざ小僧を洗い流している。
それからポケットから出した小さな入れ物のフタを開けて、男の子の傷にクリームのようなものをすり込んだ。
どうやらキズ薬のようだ。
その薬から、少しだがキラキラした光の粒子が感じられる。

あの光には見覚えがあった。
騎士団で購入したフォレスト薬草店の薬に見られるものだ。

(やっぱり)

効き目がいいなと思っていたが、どうやらフォレスト薬草店の薬にはエバの力が込められているのは間違いない。

泣きやんだ男の子を連れてエバが修道院の方へ歩き始めた時、建物から人影が現れた。
修道女だが、その佇まいを見て息をのんだ。

こんなちっぽけな修道院なのに、その人は神殿の女神像のように美しかった。
間違いない、あの方がテレジア様なのだろう。

隠れていた木立から修道院の方へ向かうと、テレジア様らしい人がまっ先に俺に気がついた。
ひたりと俺に視線を向けると、わずかに目を見開いた。

「あれ? アランさん」

続いてエバが俺に気がついたようで、のんびりとした口調で話しかけてきた。

「やあ」
「どうしてここに? お仕事ですか?」

「エバ、お知合いなの?」

やや緊張した声色だが、おっとりとした雰囲気は崩さないままテレジア様らしい修道女が口を開いた。











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