おこぼれ聖女と魔眼の騎士
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週に一度、トール修道院へキズ薬や風邪薬を届けるのが私の役目だ。
フォレスト薬草店に引き取られた後、セバスじいちゃんに私は孤児で、トール修道院で育ったことを伝えた。
そうしたらじいちゃんが、薬を定期的に届けるように言ってくれたのだ。
とてもありがたかった。
トール修道院は貧しくてもきちんとした場所で、食べ物や着るものに贅沢はできないけど困ることはなかった。
でも薬までは、なかなか手が出せない。
ほかのものに比べたら高価だし、薬を寄付してくれる人なんてこの辺りにはいないのだ。
届けに来て子どもたちと遊んでいたら、アランさんがやってきた。
「やあ」
「どうしてここに? お仕事ですか?」
こんな街はずれの修道院へ第三騎士団のアランさんが来るなんて何事だろう。
「エバ、お知り合いなの?」
院長様も不思議そうにおっしゃっている。
「こちらの方は、第三騎士団の方なんです。色々お世話になっていて」
「そう。治癒師見習いさんも大変ね」
笑って誤魔化そうと思ったけど、なんだか院長様とアランさんの雰囲気がおかしい。
「院長様、お話があるのですが」
「あなたは……シュナーデルね」
「はい。ご存知でしたか」
「そうね。一応、学んだから」
どこかで聞いた言葉だなと思ったら、じいちゃんも同じことを言っていたのを思い出した。
『シュナーデル』って、なんだろう。
「ここではなんですから、院長室にどうぞ」
気のせいか、院長様の表情がこわばって見える。