おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「院長様、どうかなさいましたか?」
「エバ。ソニアにお茶を院長室まで運んでくるように伝えてちょうだい」
「は、はい」
アランさんを連れて、院長様は修道院の中へ入っていった。
「知り合いでもなさそうだし、事件にしてはアランさんものんびりしてる……」
「エバ姉ちゃん、どうしたの?」
いけない、子どもたちが気にしている。
「院長様にお客様だから、みんなお利口にしていてね」
「は~い」
取りあえず、ソニア様にお伝えしなくちゃ。
私はソニア様を探して、厨房へ足を向けた。
ソニア様はエプロンをつけて、お昼ご飯の下準備を始めておられた。
「ソニア様、お客様なのでお茶をお願いしますって院長様が」
「客? 予定はなかったけど、誰かしら」
「え~と、アランさんっていう第三騎士団の方で、シュナーデルがどうとか……」
ガチャンと大きな音がして、ソニア様が手にしていた鍋を落とした。
「シュナーデル……」
ソニア様のお顔が真っ青だ。
「す、すぐに持っていきます! エバも手伝って!」
幼い頃からお世話になっているけれど、こんなソニア様を見たのは初めてだ。
(アランさんって、第三騎士団の騎士ではないの?)
私は不安になってきた。