おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「国王陛下が瘴気に侵されています」
アランさんの言葉に、院長様もソニア様も目を見開いている。
「なぜ?」
「なぜそんなことに!」
おふたりは気が動転したのか、身を乗り出すようにしてアランさんに詰め寄っている。
この国で一番偉い方がそんなことになっているなんて、信じられないといった顔つきだ。
「嘘でしょ?」
思わず私の口からも疑問が飛び出した。だって王宮には聖女である王妃様がいるんだもの。
「この目で見たんだ。恐ろしい瘴気に囲まれている陛下を」
院長様が両手で顔をおおってしまった。その細い肩をソニア様が支えている。
「アランさんが、国王様を、見た?」
第三騎士団の騎士が国王に会えるのかなと疑問を感じたけど、院長様はそれどころではなさそうだ。
「なぜ、あの方がそんな目にあいますの⁉」
悲痛な叫びだった。
国王陛下を『あの方』と呼ぶのだから、以前に私が想像したことは事実だったのかも。
テレジア様は、今の国王陛下が王太子様だった時の婚約者。
物語では、聖女様が現れたから身を引いたことになっている貴族の令嬢。
だけど目の前のテレジア様からは、かつての婚約者を想い続けていることが伝わってくる。