おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「第三王子から聞きました。国王陛下は今でもテレジア様のことを愛していらっしゃると」
アランさんの言葉にテレジア様は息をのんだ。
「……あの方が? まさか?」
「お嬢様!」
ソニア様もうろたえているのだろう。院長様のことを「お嬢様」って呼んでいる。
やっぱり、おふたりが貴族の令嬢とその侍女だったという話は事実だったんだ。
「テレジア様のお顔を見たら、正気に戻られるのではないかと思うのです」
「私が………お会いしてもよろしいのでしょうか」
「なんとか手はずを整えます」
「会えるものなら、会いたい」
振り絞るような院長様の言葉に、とうとうソニア様が泣き出した。
低い嗚咽が院長室に響く。
「泣かないで。まだ泣いてはダメよ」
「ですがお嬢様、あまりに長い時間が経ちました。お嬢様がどれほどあの方をお慕いしていらっしゃったか」
おふたりを見ている私まで泣きそうになってきた。
真実の愛って、なんだろう。
めでたしめでたしの物語には、どうやら裏もあるし続きだってありそうだ。
「ですが、どうやって王宮に?」
「それにはエバの力が必要です」
アランさんがとんでもないことを言いだした。