おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「もうすぐ大噴水の完成式ですが、国民に披露する前に水が計画通りに吹き上がるかどうか、試験が行われる予定です」
アランさんはその日のゴタゴタに紛れて、院長様と修道女の格好をした私が王宮に入れるように手配するという。
「あの、どうして私が院長様のお供なんですか? それにアランさんが、王宮に入れるような手形を用意できるってことですか?」
疑問が次々にわいてきて、黙って話しを聞いていられない。
とうとうアランさんに質問をぶつけてしまった。
「まあ、エバはシュナーデル様のことを知らなかったの?」
院長様がおっしゃる『シュナーデル』ってなんだろう。
「この方はおそらく、シュナーデル公爵家の後継者でいらっしゃるのよ」
「は?」
第三騎士団副団長というだけで偉い方だと思っていたけど、お貴族様だったんだ。
どうして、どうして平民ぽく行動されていたんだろう。
私の頭の中はゴチャゴチャを通りこして、竜巻のように渦巻いている。
「黙っていてすまない。君のことは、二年前に王宮で見かけていたんだ」
「二年前? 王宮⁉」
もしかして、アドラさんの店にいた頃のことだろうか。
「その頃なら、エバは庭師のアドラさんの店にいましたね」
副院長様が確認するようにおっしゃった。
「あの日だよ、エバ」
そのひと言で、私はわかってしまった。
新たな聖女様が誕生したと大騒ぎになった日。私自身にも奇跡が起こった日だ。