おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「ご存知だったのですか?」
「小さなころから、この子が水遣りをすると花や木が喜ぶのです。もしかしたらと思っていました」
「お嬢様、まさかエバは……」
「おそらく聖女様でしょう。それも力の強い」
はっきりと院長様が言葉にされたから、私はもうなにも言えなかった。
否定もできないし、アランさんが私になにをさせたいのかもわかってしまった。
「国王陛下の瘴気を浄化しろとおっしゃるのですね」
「頼めるか?」
「やれと言われたらやりますが、浄化できるかどうかはわかりません」
聖女である王妃様にもできないことが、私にできるとは思えない。
ただ、院長様のためにできるだけのことはしたいと思った。
「エバ、ありがとう」
私の気持ちが伝わったのか、院長様が涙ぐんでいいらっしゃる。
「細かい日程や時間は後日お知らせいたします。テレジア様はご準備なさってください」
「わかりました。いつ呼ばれてもいいように、修道院と孤児院のことはソニアに任せるようにしておきます」
院長様からは悲壮な覚悟が伝わってきた。
まるで死を覚悟しているかのように思えて、私の体はプルリと震えた。
「大丈夫です。きっとすべてがうまくいくように取り計らいます」
こうなったら、アランさんを信じるしかなさそうだ。