おこぼれ聖女と魔眼の騎士


白ではなかった。かといって夕陽の反射で赤いわけでもない。
限りなく白に近いけど、いつもとは何か違うのだ。

じっと目を凝らしていたら、白い外壁全体に薄い靄がかかったような状態だとわかった。

「あれは」
「もしかしたら、瘴気が……漏れ出している?」

アランさんが駆けだしたから、つられて私も走り出す。

「エバ、君はフォレスト薬草店に帰れ!」
「ダメです! 私も行きます!」

今、あれが見えているのは、私とアランさんだけだろう。
王妃様や王宮の中にいる人は気がついていないかもしれない。

どうすればいいか、なにをすればいいか、走りながら私は考え続けていた。

「あれが王都中に広がったら……」

アランさんが恐ろしいことを言いだすが、必死で走っている私には返事ができない。
だけどその意味だけは考えた。王都に瘴気があふれるなんて恐ろしくてたまらない。
病気が流行るかもしれないし、小動物までが魔獣に変わってしまうかもしれない。
それこそ二十年くらい前には王都の近くの森に瘴気が発生しただけで大騒ぎになったんだから、王宮から瘴気が漏れたなんて言えば人々は恐怖のどん底に落ちてしまうだろう。

私はこれまでセバスじいちゃんから教えてもらってきたすべての知識を頭の中で反すうする。





< 73 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop