おこぼれ聖女と魔眼の騎士
薬師の知識がこんな時に役立つかどうかわからないけれど、なにかきっかけになるかもしれない。
病気の知識、手当の知識、薬草の持つ力、あらゆることを考える。
(ケガをしたら、きれいな水で洗い流すのが基本だ)
口を清潔にするために水でよく洗うし、体を清潔にするために水で濡らした布で拭く。
それなら、あの瘴気もきれいな水で洗い流してしまえばいい。
私は少し前を走っているアランさんの袖を引っ張った。
「と、止まってください」
全力で走っているときに、急に止まると息が切れる。
なんとかアランさんがスピードを緩めてくれたので、ゼイゼイ言いながら呼吸を整えた。
「大噴水の試しは、すぐに行える状況ですか?」
「あ、ああ」
焦っているのに、私がのんきに噴水の話をするからか、アランさんは怪訝な顔で私を見た。
「水を溜めている場所に、行かせてください」
「君は、噴水の仕組みがわかっているのか?」
「アドラさんに教えてもらいました。丘の上に人工の池があって、水をたっぷり溜めているって」
「そうだ。その水を高い場所から落下させた時に起こる力を利用して、水を噴き上げるらしい」
「私がその水を浄化します」
池の水をまるごと聖水みたいにしてしまえば、大噴水の水しぶきとともに王都へ拡散していくかもしれない。
「一時しのぎですが、なにもしないよりいいと思うんです」
「君は……」