おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「やってみよう」
難しいことだろうに、アランさんはすぐに覚悟を決めてくれた。
王宮に連れて行ってくれて、アランさんの部屋らしい小さな執務室に通された。
「あちこち話しを通してくるから、ここで待っていて」
私を残したまま、部屋を飛び出していくアランさん。
私はじいちゃんに連絡できず、ポツンとひとり取り残されてしまった。
どれくらい時間が経ったのかもわからなくなった頃、制服姿の侍女さんがお茶と軽食を持って来てくれたので忘れられたわけではなさそうだ。
日暮れの時間に王宮に来たのだから、きっと夜中に近い時間だろう。
待ちくたびれた私は、小ぶりな椅子に腰かけたまま、うつらうつらと居眠りをしてしまった。
色々ありすぎて、体も頭も疲れ果てていたのだ。
お優しい院長様と国王陛下は、実はとても悲しいお別れをしていたんだ。
その心を隠して何年も耐えてこられたから、陛下は瘴気にむしばまれてしまったのだろうか。
浅い眠りの中で私はそんなことを考えていた。
***
「エバ」
ふと名前を呼ばれた気がして、うっすらと目を開けた。
目の前には真っ赤な髪と瞳。アランさんだ。
「宰相の許可が下りた。エバが池の水を浄化してくれたら、大噴水の仕掛けを動かす」