おこぼれ聖女と魔眼の騎士
「はい!」
じいちゃんのことや院長様のことが気になったけど、一気に瘴気を祓うことの方が大切だ。
私はアランさんについて小部屋を出ると、長い廊下を歩いて王宮の外に出た。
ちょうど朝日が昇ろうかという時間だった。
「疲れているだろうに、すまない」
「いえ、アランさんこそ眠っていないのでは?」
裏庭のような場所だったが、すでに馬が準備されていた。
「俺と一緒に乗ってくれるか?」
そう言うなり、アランさんはひらりと馬にまたがり、私の方へ手を差し出してくれた。
その手をつかむやいなら、私の体が宙に浮く。
「ひゃあ!」
声を出したときには、もうアランさんの前にちょこんと横座りしていた。
「行くぞ!」
軽いムチの音と同時に、馬がゆっくり走りだした。
池があるのは王宮の裏山だけど、歩くと時間がかかるらしい。
馬車道もあるそうだが、アランさんは目立ちたくないのだろう。
まだ早朝だから使用人たちも起きていないのか、とても静かだ。
王宮の色は、昨日見たときと変わりない。
わずかな量の瘴気だが、うっすらと漂いながら王都の方へ流れるように広がっていくのがわかる。
「一刻の猶予もないな」
馬を駆るアランさんの言葉は重かった。