おこぼれ聖女と魔眼の騎士


細い道とはいえ、さすが王宮の敷地内だから整備されていた。
木立を抜けると、開けた場所に出る。
朝日を受けて、人工で作られたという池の表面がキラキラと輝いている。


「ここだ」

池のそばにあるレンガ造りの建物の中が、水門の設備のある場所らしい。
そこから池の水を勢いよく落とすのだろう。

「池の水を浄化……」

口で言うのは容易かったけど、こんな量はさすがに想像していなかった。
毎朝セバスじいちゃんが薬を作るときに使う水に祈っていたけど、池に向かって同じことをしても効果があるのかな。

水面のきらめきを見ていたら、もともとは霊峰マント山からひかれているから清らかなんだと気がついた。
私が少し力を足すだけで、瘴気を浄化することができるかもしれないと思うことにした。
そうしないと、緊張で膝がガクガクしてきたからだ。

「エバ、頼む」

貴族のアランさんが私に頭を下げてきた。

「や、やめてください、アランさん」

「君の力に王都の人たちの生活がかかっているんだ」

ものずごく重大なことだと、あらためて責任を感じてしまった。
水で洗えばいいなんて私が思いつきで言いだしたのに、アランさんだけでなく宰相様もほかに方法がないと考えたんだ。

「やってみます」

ここから見下ろせる位置に公園がある。その中央に造られた真新しい大理石が輝いている噴水がはっきり見えた。

あそこに水を送るんだと想像をふくらませながら深呼吸をしかけたら、馬のいななきが聞こえてきた。
ガラガラと馬車の音も近づいてくる。

「こんな時間に何事だろう?」

アランさんも訝しげだ。




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