おこぼれ聖女と魔眼の騎士


「そこのエバなる娘ほど、私たちの力は強くはない。だが、少しは役に立つであろう」
「!」

高貴な方々が、浄化のために朝から足を運んでくださったのだ。
私は感動して言葉が出なかった。

「ありがとうございます。けれど、水に力を入れるとなると跪いていただくことになってしまいます」

アランさんの言葉に、王妃様は声をたてて笑い始めた。

「ホホホ、なんのそれしき。のう、フローレンス」
「はい! 私の微々たる力でもお役にたてれば幸せです」

「王都の危機と聞いておる。気にするでない」

そう言うと、王妃様は私の方へ歩み寄る。

「ともに、力の限り」

「は、はい!」

それから私たちは三人そろって水際に立った。
さすがにおふたりにはクッションを準備していて、そこに膝をついて祈る姿勢をとる。

それから三人顔を見合わせて、同時に両手を水にの中に差し込んだ。

思い思いの言葉で、水に祈りを込める。

「国のためにお力をお貸しくださいませ」

「王都の民が救われますように」

おふたりは、同じ言葉を幾度も繰り返されている。
私は心の中でいつものように願った。

(すべての穢れよ、水の力で消え去れ)






< 79 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop