おこぼれ聖女と魔眼の騎士
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ある日、私はアドラさんたちと一緒に王宮で開かれるお茶の準備のために、広大な庭園で働いていた。
お茶会には高位貴族のご子息やご令嬢たちが大勢招かれていて、第三王子のジョフレ様の側近候補とか婚約者候補が選ばれるという噂だった。
三番目の王子様とはいえ、ジョフレ様は王妃様がとくに可愛がっておられるという。
どうやら『広間だけではなく、庭園で遊びたいと王子が希望しているの』という王妃様のひとことがあったらしい。
急な変更だけど、王妃様じきじきのお言葉だから誰も逆らえない。
王宮の庭師だけでは人手が足りなくて、急遽アドラ園芸店の職人にも声がかかったのだ。
アドラさんのアイデアで、優美な王宮の庭園とはいえ子ども向けに飾るために、鉢植えにしたコニファーを動物のイメージに刈り込んであちこちに置くことにした。
お茶会が始まるまであまり時間がないから急ピッチだ。
アドラさんたちは黙々と剪定を続けるし、私も刈った枝を片付けたりして作業を手伝った。
広間の大きな窓は開け放たれ、ホールから続く庭には薄い紗の布を張った天幕が張られた。
それが風が吹く度になびいて、とても美しかった。
愛くるしいトピアリーの緑と、まっ白なテーブルや椅子が青空に映える。
(おとぎの国みたい……)
私は犬や鹿の形に整えたコニファーに、首輪のように赤やピンク、金色のリボンを結んだら可愛いのではと思いついた。
「かわいから子どもに喜ばれそうだな」
アドラさんが賛成してくれたから、私は太めのリボンを巻き付けていった。
とってもいい仕上がりになったと思う。