おこぼれ聖女と魔眼の騎士
***
俺は今、この世でもっとも清らかなものを見せられている。
三人の聖女が揃って水に力を注いでいる。
この水で、王宮から漏れ出た瘴気を消し去ろうとしているのだ。
確かに人それぞれ、顔も体も性格も生まれもみんな違っている。
同じように、聖なる力にも個性や強さの違いがあるのだろか。
この光を見ることができるなんて、この力もまんざらではないと思った。
気味悪がられていた赤い瞳を、エバが『綺麗』と言ってくれた日からずっと思い描いていた。
この力をいつか誇れるようになりたいと。
その願いが叶ったのだ。目の前で繰り広げられている光の競演に、ただただ見惚れていた。
王妃様の突き刺さるような細い光。
マンシュタイン嬢のふんわりぽよぽよとした光。
どれも美しいが、エバの光は独特だった。
細かな粒子のような光が大量にその指先から流れ出ていくのだ。
俺のそばに、噴水の工事を請け負っていた職人が歩み寄ってきた。
「そろそろ、よろしいでしょうか」
池の水を流すタイミングを見計らっていたのだろう。
俺にしか光は見えないのだから、水の変化を見て判断を任されていたのだ。
昨夜、俺の力を話したときの父の苦虫をかみつぶしたような顔が思い出される。
聖なる光の力が見えると言ったら、父はキョトンとした顔をした。
そしてすぐに顔を真っ赤にして怒りだしたのだ。
『見え透いた嘘をつくな!』
だから今日こそ、俺は自分の力を証明する。
悪しきものと聖なるものの両方が見えることを。
「よし、もう十分だろう」
池は黄金のように輝いていた。
「ははっ!」