おこぼれ聖女と魔眼の騎士
職人がレンガ造りの小屋の中に走っていった。
そこで池の水をせき止めていた水門を解き放つのだろう。
しばらくすると、大地の奥から轟音が聞こえてきた。
小屋から地中を通って、滝のように水が流れ落ちていったのだ。
王妃様をはじめ、この池のほとりに立つすべての人が無言のままだ。
しばらく待つと、眼下の公園から水が吹き上がったのが見えた。
それと同時にキラキラと水しぶきが舞い上がる。
普通の水ではない、浄化されたもの。聖なる力が込められたものだ。
風が吹くたびに、そのキラキラした光が王宮や王都の街に広がっていくのがよくわかった。
「どうじゃ?」
王妃様がいつになく慎重な物言いで問いかけてこられた。
きっと内心は気になってしょうがないはずだ。
「大丈夫でございます。浄化の光が王宮にも王都にも広がっております」
「そうか……」
そのまま、王妃様は馬車の方へ足を向けた。
マンシュタイン嬢も無言のまま、後ろに続く。
力を使い過ぎたのか、少し顔色が悪い。
「どうかお体をおやすめください」
そう言って、おふたりを見送った。
俺とエバには、まだすることがあるのだ。