おこぼれ聖女と魔眼の騎士
大噴水から吹き上げた水で王都の瘴気は浄化できたけど、それは一時的なものだ。
実際に見ないと、源流から王都までの澱み具合はわからない。
王国の北にある霊峰マント山まで、大噴水のために作った水路を辿って浄化の旅をする。
こんな大旅行の計画、誰が立てたのかと思ったら第三王子のジョフレ様だった。
ジョフレ様は当然のごとく、アランさんも巻き込んでいる。
なにしろアランさんの力がないと、悪しきものか聖なるものなのかわからないからだ。
……ということで、私はジョフレ様やアランさんと一緒にマント山に行くメンバーに選ばれている。
もちろん聖女ではなく、治癒師として。
そう、私は治癒師の試験に合格したの!
あれこれあって忙しかったけど、一人前の治癒師になれました。
「準備はいいかい」
「セバスじいちゃん」
「ほら、これを持っていきなさい」
「わあ」
じいちゃん特製のキズ薬、かぜ薬、頭痛薬、胃腸薬。
長い旅になるだろうからって、こんなに作ってくれたんだ。
「ありがとう!」
「無事に帰ってくるんだよ、エバ」
「うん! ここが私の家だもの!」
心なしか、じいちゃんが嬉しそうな顔をした。