ただ…傍にいたいだけ…
「━━━━お帰り!」

そして今日も、学校帰りに定食屋に向かう俺。

「………」

「ん?琉輝くん?どうしたの?」
黙ったままの俺の顔を覗き込んできた、雛葉。

俺は、その雛葉の手を掴んだ。

「え……琉輝、くん?」


「好き!」

「え?」

「雛葉が好き!」

「る、琉輝くん?」

「なぁ、旦那こと想ったままでいいから、俺と付き合って!!」

「だからね。
それは、無━━━━━━」

「傍にいてよ!!」

「琉輝くん…」

「恋人にしてって言ってるんじゃねぇ!
傍にいたい!!
雛葉の、一番近くにいたい!!」

「………」

「雛葉のせいで、胸がいてぇんだよ!!?」


俺は握った雛葉の手を、握りしめていた。



“今日は、もうすぐあがりなの。
待っててくれる?”

そう言われ、俺は食事をしながら店で待っていた。


一時間位して、雛葉が俺の席に来た。

「お待たせ」

「ん」

「少し、話そ?」


俺達は、一緒に外に出た。

ゆっくり歩いて、俺のマンションの近くの公園に向かった。


「琉輝くん」

「ん?」

「恋人にはなれない」

「だから、わかってるって!」

「キスもしない」

「は?」

「でも、デートはしてあげる」

「え?」

「できる限り、傍にいる。
それなら……いいよ」


雛葉は、俺を見上げて微笑んだ。
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