ただ…傍にいたいだけ…
「え?」
そんな怒ることかよ……

「歯止め、聞かなくなることはやめよ?」

「は?」

「ベッドのそう。
“何もしないから”って言って、一緒のベッドに寝たくなる。
すると今度は、おでこならいいかなって、おでこにキス。
それが頬になって、口唇にしたくなる」

「雛葉…」

「私と良一も、そうだったからよくわかる」

「え?」

「良一にプロポーズした時、約束させられたの。
“寝室は別。キスをしない。もちろん、セックスも”って」

「え?」
なんで……?

「良一の病気のこともあるけど、万が一妊娠したら後が大変だからって。
私は、そうなっても一人で育てるって言ったんだけど……
ほら!良一は、真面目だから……」

「あぁ…」
父親がいないと、子どもに寂しい思いをさせるってやつか!

「……………寝室を一緒にすると、一緒にくっついて寝たくなる。
一緒に寝ると、触れたくなる。
キスをしたくなる。
そしたらもう……後は、歯止めなんか効かない」

「俺は…」

「ね?やめよ?」

「俺は!!理性失くさねぇよ!!」

雛葉の肩を持ち、訴えるように言った。

「琉輝く……」

「だって!キスしたら、もう…一緒にいれなくなるじゃん!
そんなのやだもん!!」

「………」

「俺は!!雛葉の傍にいたいんだ!!
雛葉と一緒に、過ごしたいだけ!!
そりゃ…雛葉を彼女にして、カケ達に自慢して、キスしたり、抱き合ったりしたいよ?
でも、雛葉の中に旦那がいる限り無理じゃん!
そんなの、わかってるよ!!
……………頼むよ…
雛葉まで、俺を一人にしないでくれよ……」


苦しかった。

雛葉に嫌われたような気分だった。
蔑ろにされたような、孤独感が俺を襲っていた。


俺は、掴んだ雛葉の肩に頭を預けるように乗せて、苦しい思いを吐き出していた。
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