ただ…傍にいたいだけ…
夏休みは、ほとんど部屋に籠っていた。

何度か両親が声をかけてきたが、あいつ等は仕事で忙しい。

なので、そんなにしつこく干渉されずに済んだ。


カケやナルが心配して、何度も連絡をくれたが無視していた。



ただ……死んだように夏休みを過ごし、考えることはただ一つ。

雛葉のことばかりだった。


「あ、ヤベ…荷物、取りに行かねぇとな……」


夏休みが終わる前日。

久しぶりに外に出た。

「うわっ…眩しいー」


雛葉のマンションに着く。
雛葉はいなかった。

「良かった…」

荷物を片付ける。

スーツケースを開けると、中に手紙が入っていた。


「え………」

【琉輝くんへ】

雛葉の丁寧な字が、並んでいた。


【琉輝くんへ
もう一度、ちゃんと話がしたいです。
9月3日。良一のお墓の前で待ってます】



9月3日。
石崎 良一の命日だ。


俺は当日、学校終わりに墓に向かった。

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