夕焼けの恋
反射的に弥生の方を向いたが、俺は目を逸らした。

謝ってほしいわけではないし、要求できる立場でもない。

黙る俺に弥生は続ける。

「中学の頃はあんなじゃなかったんだよ。雰囲気も普通だったし、もちろんピアスなんて空いてなかった。普通の優しい人」

俺は尚も黙ったまま。

「どうしてあんなになっちゃったんだろ」

最後は本当に独り言のようだった。


それからはどこかお互い気まずくてそのまま別れた。

「今日はありがと」

「こちらこそありがとうございました」

「じゃあ気をつけて」

「はい」

彼が弥生に言った「またね」を俺は言えなかった。
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