目が覚めたら憧れの峰崎くんと結婚することになっていました
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朝食のあとは身支度を整えた。
峰崎くんはひげを剃りながら、『ユカコのメイクポーチはそれ』と指差して教えてくれた。
私のメイクポーチだというそれを開けてみた。
うん。BBクリーム、眉ペンシル、それからグロス以外、使い方がよくわからないアイテムばかり。
グロスにしたって何色もあって、どれを使えばいいのやら。
どうせ式場でメイクされるんだし……
「私、ノーメイクでいいやー」
「えっ? うわ、痛っ!」
峰崎くんの顎下にポツンと赤い点が付いていた。
「ご、ごめんね。急にしゃべったから」
「いや、ユカコのせいじゃないよ。それにすぐ止まるし、ここならたぶん目立たない」
峰崎くんは顔の角度を変えながら、鏡を調べた。
「俺って大事な場面でカッコつかないんだよなー」
峰崎くんがそう独りごちるのが聞こえた気がした。