星空の下で愛を♦年下看護師の彼は彼女に一途な愛情を注ぐ♦
それに気付くことが遅すぎて身も心もボロボロになってしまったけれど、今日が終われば、明日からはまた違う生活を送ることができる。

次こそ、自分を大切にするんだ。

そんなことを考えながら、いつものように当直室のドアの前に立つ。 心臓の鼓動はさっきよりも大きくなっていて、周りに聞こえてしまうのではないかと心配になるくらい。

コンコン、とドアをノックすると、「入ってもいいよ」と言う梅沢先生の声が聞こえた。


「失礼します……」

「星七、お疲れ様」


静かにドアを開けるとベッドの上では梅沢先生が休まれていて、ゆっくり起き上がると私に向かって「おいで」と両手を広げてくれている。

その姿になぜか胸がぎゅっとなってしまったけれど、惑わされてはいけない。 梅沢先生の好意には反応せずに、そのまま横に腰かけた。


「星七? どうした?」

「……今日は、梅沢先生にお伝えしたいことがあって来ました」

「伝えたいこと、ね」


なかなか次の言葉が出てこず、しばらくの沈黙が流れる。 ぎゅっと唇を嚙みしめたままなにも言わない私の肩を、梅沢先生が自分の方へと抱き寄せてくる。

ダメ……このままだと、流されてしまう。
意を決して梅沢先生の方を見つめると、やっとの思いで沈黙を破った。


「先生……今日で、終わりに…しましょう」
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