星空の下で愛を♦年下看護師の彼は彼女に一途な愛情を注ぐ♦
そっと、遠山くんの左耳に触れてみる。 外観的には、特に変化は見当たらない。

だけど、いつの頃だったか本で読んだことがあった。
呼びかけに反応しない、なんの前触れもなく突然症状が出るこの病気……。

彼は私の手を握ると、にっこりとほほ笑んだ。


「さすが星七だね。 星七には隠し事、できないや」

「やっぱり……」

「聞こえないのは、左耳だけなんだ」

「どうして……なにも言ってくれなかったの?」


私が1番気掛かりだったこと。

仕事上、病棟の看護師に病状を説明しなければならないのはわかる。 
シフト制だし、いろいろな時間帯で勤務をしている看護師なんだもの。 遠山くんが入れない時間帯を、誰かがカバーしなければいけない。

でも、どうして彼女である私に1番に教えてくれなかったのか。 私には、言う必要がなかったのかな……。


「……ごめん。 星七には、心配かけたくなかった。 入院も2週間程度だし、上手くいけば隠せるかもって」

「そんなの、隠せるわけないじゃない」


「はは、そうだよね」と、弱々しく笑った遠山くん。
いつものあの笑顔とはやっぱり違う気がして、胸の辺りがチクリと痛んだ。

同じ職場なんだもの。 隠すなんて、できるわけがない。

それなのに、私に隠そうとして「心配かけたくない」と言ってくれている遠山くんは、いったいどこまで優しいのだろう。
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