星空の下で愛を♦年下看護師の彼は彼女に一途な愛情を注ぐ♦
「はぁ……早く退院して、もっともっと星空に触れたい」


私の頬に優しく触れながらそう言った大空の顔は、いつもより優しい表情に思えた。

「うん、私も同じ」と耳元で呟いたのが左側で、私の想いは大空には届かずだった。


* * *

「大空、お疲れ様」


9月も中旬になり、より秋が深まった今日。
すべての治療を終え、大空は無事退院することになった。

入院期間中は言われた通りすべての治療をした大空。 残念ながら後遺症は残ってしまい、左耳の聴力は退院する時点で約70%程度しか聞こえていないのだそう。

今後は補聴器を活用しながらの生活になる。 もちろん今日も1人で退院するのは当然不可能で、キーパーソンである私がお迎えに来たのだ。
そしてそのまま、大空の実家がある福井県に向かう予定。


「星七、迎えに来てくれて嬉しい」

「そんなの当たり前でしょ? 来ないわけない」

「ありがとう」


一生懸命荷物をまとめている私の長い髪を、大空のがそっと耳に掛けた。

一瞬ドキッとしたけれど、今はそんな甘い時間を過ごしている暇はない。 一度大空の住むアパートへ荷物を置いて、急いで電車に乗らなければならないのだ。


「大空、忘れ物ない?」

「うん、昨日のうちに、だいたいまとめておいたから」
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