【マンガシナリオ】キミの笑顔の裏側は…!?
♡°·第4話·°♡学園の王子と学園の姫
○ファストフードチェーン店(放課後)
その日の放課後。
店員「いらっしゃいませ〜」
店内に入り、キョロキョロと辺りを見回すさくら。
楓「あ…!さくらちゃん、こっちこっち」
さくら「遅くなってゴメンね。友達と…藍に色々言い訳してたら遅くなっちゃって」
早速、楓に「作戦会議」という名目で呼び出されたさくらは駅の近くにある某有名ファストフードのチェーン店を訪れていた。
楓「で、さくらちゃん。コイツが俺の妹の木崎妃奈ね。で、妃奈、こっちは和谷さくらちゃん。俺の隣のクラスで王子の幼なじみ」
妃奈「はじめまして…。さくら…先輩」
楓の隣の席にちょこんと座っている妃奈は、人見知りしているのかおずおずと挨拶をかわす。
さくら(か、かわいい…!)
さくら「妃奈ちゃん、はじめまして。2年の和谷さくらです。よろしくね」
そんな言葉とは裏腹に、心の中では妃奈のあまりの可愛さにキュンとするさくら。
楓「ゴメンね。さくらちゃん、妃奈ってちょっと人見知りな所あって、そのせいで友達も少ない…」
妃奈「お兄ちゃん…!先輩の前で変なこと言わないでよっ!」
バシッと楓の腕を叩き、妃奈は少し怒ったような口調で彼を牽制する。
楓「いって!ったく、本当のことなんだから怒ることないだろ〜」
ふいっとそっぽを向く妃奈に呆れたような視線を送る楓。
そんな仲良しなやり取りをみて、さくらはクスッと微笑んだ。
さくら(本当に…兄妹なんだなぁ)
妃奈「あ、あの…。さくら先輩、今日は来てくれてありがとうございます。えっと…」
さくら「藍のファンなんだよね…?」
確かめるように問いかけるさくらに妃奈は、カァっと頬を赤らめて顔を伏せた。
妃奈「はい…。その実は…ちょっと前に藍先輩に助けて頂いたことがあって、そのお礼を言いたくて…。でも私は全然接点もないし普段すぐに帰られてしまうので…だから…学年が同じお兄ちゃんに相談してて…」
さくら(すぐ帰るのは家でゲームに勤しんでるからなんだよなぁ…)
内心苦笑いをうかべるさくら。
楓「まぁ、俺は王子とクラスも違うし話したこともほぼないし?どうしようかと思ってた矢先、さくらちゃんと知り合えたってわけ。可愛い妹の頼みは、叶えてあげたいな〜とは常日頃思ってるからラッキーだったなぁ」
クスッとさくらに向かって微笑む楓。
さくら(仲良くなれて、ねぇ〜)
正直に言うと、仲良しとは程遠い関係性だろうとツッコミをいれたくなるのをどうにか堪えたさくらは楓から妃奈に視線を戻した。
さくら「とりあえず、妃奈ちゃんが藍と話す機会を作れればいいのよね」
楓「そういうこと!さくらちゃんは話が早くて助かるな〜」
そう言ってニコニコ笑顔の楓とは対象的に
不安そうな様子の妃奈。
そんな彼女に向かってさくらは優しく微笑んだ。
さくら「妃奈ちゃんがお礼を言う機会を作るくらいなら大丈夫だと思う。私から藍に声をかけてみるね」
妃奈「ありがとうございます…!よろしくお願いします」
一生懸命な妃奈の様子に、さくらは協力してあげたい気持ちになっていた。
○さくらの部屋(夜)
さくら「ねぇ、藍」
藍「何…?俺今、忙しいんだけど」
忙しいと言いつつ、ダル着の藍はさくらの部屋でスマホのオンラインゲームをしている。
そんな藍の様子にさくらは内心ため息をこぼす。
さくら(…妃奈ちゃん、藍に助けてもらったって言ってたけど…本当にそれって藍なのかな…?まぁ、学校では人あたり良いみたいだけど、家じゃこれだもんなぁ…)
さくら「忙しいってゲームしてるだけでしょ。全く…あんたは夕ご飯食べてからすぐ私の部屋きたかと思えばゲームばっかり…課題終わったわけ?」
藍「当然じゃん。さくらこそ終わってんの?」
さくら「い、今からやるの!藍がゲームでうるさくするから集中できないんでしょ…!」
ケロッとした様子でそう返す藍にさくらは口角が引きつるのを感じる。
さくら(これでわりと成績も良いからムカつくよねぇ…昔から要領いいんだから)
スマホから視線を外すことなく、さくらと話をする藍。
さくら「あ、あのさ…藍って1年の木崎妃奈ちゃんって知ってる?」
藍「知らない」
さくら(うっ…即答)
興味ないと言うように、話半分の藍。しかし、さくらも楓や妃奈と約束した手前引き下がるわけにはいかない。
さくら「ほ、ほら、1年の可愛い子だよ!入学式の時に皆騒いでたじゃん?」
藍「別に俺、そういうの興味ないし」
懸命に説明するさくらに藍は、言葉で一刀両断する。
このままじゃ埒が明かないと、さくらは勝手に話を進めることにした。
さくら「実はね、その妃奈ちゃんって子と話す機会があって…なんか藍に助けてもらったことがあるらしくてお礼を言いたいんだって…」
藍「ふーん?助けた記憶ないからその子に気にしないでいいよって言っといて」
さくら「そ、そういうワケにはいかないの…!で、妃奈ちゃんって実は遊佐くんの妹で…遊佐くんにも頼まれてるのよ」
ピタリ。
楓の名前を出した瞬間、藍は動きを止め、スマホから顔を上げてさくらを見つめる。
藍「遊佐…?」
さくら「そうそう!隣のクラスの…ほら!この前コンビニで会ったでしょ?」
ようやく話を聞く気になったかと喜ぶさくらとは裏腹に無表情な藍。
藍「へぇ?遊佐から頼まれたんだ」
さくら「…?」
さくら(なんか機嫌悪い…?)
少しだけいつもより藍の声のトーンが低い気がしてさくらは首を傾げる。
しかし、それも一瞬。
次の瞬間には再度スマホの画面に視線を戻しゲームを再開する藍。
さくら「妃奈ちゃんも藍にお礼を言いたいだけみたいだから…ちょっとでも時間作ってもらえない?」
さくらは、控えめにそんな提案を藍にしてみる。断られる可能性が大なのはわかっているが、一応しっかり確認をしておかないといけない。
藍「…いいよ。いつ話せばいいわけ?」
さくら「うそ!?いいの!?」
珍しく肯定した藍にパチパチと目をしばたたかせるさくら。
さくら(どういう風の吹き回しだろ…?)
頭の中ではそう考えつつも、さくらは約束を取り付けたことに対してホッとする。
これで、楓は約束を守ってくれるから藍の体裁も保たれるし、妃奈ちゃんは藍にお礼を言えるし一石二鳥だ。
さくら「藍、ありがとう…!妃奈ちゃんも喜ぶよ」
嬉しそうに微笑むさくらを横目でチラリと見た藍はボソッと何かをつぶやいた。
しかし、その声はあまりにも小さくてさくらの耳には届かなかったのだった。