【マンガシナリオ】キミの笑顔の裏側は…!?
♡°·第5話·°♡きっかけは突然に…


○翌日・学校の食堂(昼休み)

いつも騒がしい学校の食堂も今日ばかりはシンと静まり返っている。そして時折、ヒソヒソと小声で何事か話している生徒たち。

女子A「あの4人って仲良かったの…?」

女子B「レベル高すぎだよね〜」

男子A「やっば、妃奈ちゃん可愛すぎ」

さくら(…やっぱり、場所間違えたよ)

他の生徒の視線を背中に感じ、さくらは思わず身をすくめた。

現在、食堂の席に座っているのはさくら、藍。そして、楓と妃奈の4人。
(席は、さくらの横に藍が座り、さくらの前に楓、そして藍の前に妃奈という並び)

美形揃いの中で、場違いな自分。
そして、変に注目を集めてしまっているのを感じ取り、肩身が狭い思いのさくら。

そんな中で、藍と楓は気にもとめず学食でそれぞれ頼んだメニューを食べていた。(藍はトンカツ定食、楓はカツ丼)

妃奈は緊張しているのか、昼食に手を付けず、ずっと下を向いて俯いている。

さくら「妃奈ちゃん、ほら早く食べないと頼んだお蕎麦のびちゃうよ?」

妃奈「あ、は…はい。いただきます…」

さくらが促したことでようやく昼食の蕎麦に手を付けた妃奈。その様子を見届けたさくらもアジフライ定食に手を付ける。

しかし、ホッとしたもつかの間。

藍「それで…さくらに聞いたけど君が俺に何か話があるんだって?」

あらかた食べ終わった藍が箸を置き、唐突に目の前に座る妃奈に問いかけた。

妃奈「…っ!は、はい…あの…」

突然、藍に声をかけられしどろもどろになる妃奈。

さくら「ちょっと、藍ってば。急に話しかけたら妃奈ちゃんビックリするでしょ」

楓「王子、ごめんね。妃奈は結構人見知り激しくてさ〜。ま、うちの可愛い妹の話ゆっくり聞いてやって」

藍「……そう。悪かったよ」

さくら(藍、絶対に内心面倒くさがってる…)

さくらと楓にたしなめられ、表情には出さないが、隣に座る若干不機嫌そうな様子の藍にさくらはハラハラする。

妃奈「すみません…突然、呼び出したりして…。実は私、藍先輩に助けて頂いたことがあって…ずっとお礼が言いたかったんです。先輩は覚えてないかと思うんですけど……今年の1月、高校受験の時にこれを貸してくださって」

そう言って、妃奈が出したのはシンプルなシャープペンシルと消しゴムだった。

藍「それは…」

何か思い出したのか一瞬、ハッとしたような表情を見せる藍。

妃奈「私ってば受験当日、かなりテンパってて…筆記用具を家に忘れてきてしまったんです。ありえないですよね…でもその時、藍先輩が困ってる私にこれを貸してくださったんです!」

そう言ってフフッと嬉しそうに微笑む妃奈。

さくら(そういえば、藍、受験日にボランティアで何か手伝いしてたっけ…?先生に半ば無理やり頼まれて家に帰ってきてからはめちゃくちゃ愚痴ってたけど…)

妃奈と藍の繫がりがようやくわかったさくらはなるほどと内心納得する。

妃奈「先輩のおかげであの時は助かりました…!これ、お返しします」

妃奈は持っていた消しゴムとシャーペンを藍に差し出す。

藍「そっか、あの時の…。わざわざありがとう。でも気にしないで。これはあの時、君にあげたものだから返さなくていいし」

藍はやんわり受け取るのを断りつつ、王子スマイルで妃奈に微笑みけた。

妃奈「あ、ありがとうございます」

楓「妃奈、とりあえず王子にお礼言えてよかったじゃん」

妃奈「うん…!お兄ちゃんありがとう。さくら先輩もありがとうございます」

きちんと藍にお礼が言えたことで少し緊張がほぐれたのか妃奈は、楓とさくらに向かって笑顔を浮かべる。

さくら(よかった、妃奈ちゃんがちゃんとお礼言えて、これでミッションコンプリートだよね?遊佐くん)

ちらっと視線を楓に送ると、何を思ったのかパチンとウインクをしてくる。
そんな彼に対して、さくらは思わず苦笑い気味に微笑んだ。

楓「ねぇ!せっかく仲良くなれたんだしさ。よかったら今度皆で遊びにでも行かね?」

フレンドリーにそんな提案をする楓はさくらと藍を交互に見つめる。

藍「悪いけど休みの日は俺、基本忙しいから無理」

「悪い」と言いつつ、全然そうは思っていない様子の藍は、笑顔を崩さず、バッサリ楓の提案をはねのけた。

藍にとって休みは、家でゲーム三昧できる特別な日だから、相当な事情がない限りはほとんど家に引きこもっている。

さくら(新作ゲームの発売日とかなんちゃらとか言うゲームのイベントとかくらいでしか外出しないもんな〜)

呆れたような視線を送る私を無視して、藍は1人スマホをさわり始めた。

どうやらこれ以上話に参加する気はないらしい。

楓「王子は無理か〜。それじゃ、さくらちゃんはどう?なんなら俺と2人でデートでもいい…って!」

妃奈「さくら先輩、気をつけてください。妹の私が言うのもあれですけど、お兄ちゃんかなりチャラいんで…。でも、私もさくら先輩と遊びたいです」

バシッと楓の背中を叩いて牽制した妃奈は、そのままふわっと柔らかい笑みを浮かべ、さくらを見つめた。

さくら「…っ!うんうん!もちろんだよ〜。遊びに行こう…!」

可愛い妃奈に誘われ、嬉しさのあまり間髪入れずにそう返答するさくら。

すると。

藍「…やっぱり俺も行くよ」

さくら(藍…?)

突如として意見を変えた藍にさくらは目を見張る。
珍しいこともあるものだ。

妃奈「え…!?藍先輩も…!?ほ、本当ですか!?…夢見たい…」

藍の返答に嬉しさからかキラキラと目を輝かせる妃奈。

楓「ふーん、あれ?王子は行かないんじゃないの〜?」

そして、藍に対して、煽るような物言いをする楓。

兄妹の対象的な反応と、突然の藍の参加に対して内心戸惑うさくら。

藍「俺が来たら迷惑…かな?」

楓から妃奈へ視線を移した藍は、少し表情を曇らせつつそう言った。

さくら(妃奈ちゃんを味方につける気ね…。本当に抜け目ないと言うか…)

さくらは内心、ハァ…とため息をこぼす。

妃奈「い、いえ!そんなことないです!もう、お兄ちゃん余計なこと言わないでよ。せっかく藍先輩も行く気になってくれたのに」

藍の思惑通り、ぷくっと頬を膨らませ、楓に詰め寄り、拳を握りしめる妃奈。

楓「うわっ、わかったから。怒るなよ。別に俺は来るなって言ってるわけじゃねーんだから」

ガタッと席を立ち、楓は妃奈から距離をとった。

楓「さくらちゃん、詳しくはまたチャットで連絡するから…!妃奈、お前もその暴力的なところなおさねーと王子から嫌われるぞ〜」

それだけ言い残し、楓は食堂をあとにしたのだったーー。


○藍の部屋(夜)

久しぶりに藍の部屋に来たさくらは、大きなパソコンのモニターでオンラインゲームに集中している藍に向かって声をかけた。

さくら「藍、今日のあれはどういう風の吹き回し?いつもなら絶対、行くなんて言わないのに…」

藍「なんで、さくらが俺の部屋にいるんだよ…。早く自分の部屋に戻れって」

さくら「なっ…!」

さくら(あんたはいつも自分の部屋みたいに私の部屋にいるでしょ〜!?)

そう叫びたいのをグッと堪えたさくらは、フーッと息を吐き、心を落ち着ける。

さくら(だめよ、ここで怒ったら話をうやむやにされて終わりなんだから…)

さくら「理由を聞いたら言われなくても部屋に戻るわ」

藍「ハァ…」

ちらりと画面から視線をそらし、さくらを見つめた藍は嫌そうにため息をこぼした。

さくら(こらえろ〜私)

内心そんなことを考えながら、さくらは藍の返答を待つ。

藍「別に、特に理由はないよ。ちょっとした気まぐれ。てか、さくらこそどういうつもり?」

さくら「どういうって…?」

急に訳のわからないことを言い出す藍にさくらは、キョトンとした表情を浮かべる。

藍「…わかんないならいいよ。もう帰れって」

さくら「ちょっとさっきから黙って聞いてればなんなの…藍って…っ!?」

呆れたような藍の言葉に、イライラが最高潮にきたさくらは、とうとう我慢できなくなり、藍が座っている方向に向かって歩み寄った。

その時。

急に藍に手を引かれ、バランスを崩したさくらは藍に抱えられるように抱きしめられる。

さくら「ら、らん…!?」

突然の出来事に戸惑うさくら。

すると、耳元で。

藍「男の部屋に長居するなって言ったろ?バーカ」

クスクスと小馬鹿にしたような藍にさくらは絶句する。

さくら「っ!?からかわないでよ…!もういい藍なんか知らない、バカ!」

バッと藍から身を離したさくらは顔を真っ赤にし、そう言い放ち、藍の部屋を出て行ってしまった。

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